ひそひそまつり

日々のことをひそひそと。

横切る。

家に辿り着くまでの
坂道に入る角の所にある家の垣脇に
おそらく、その家で飼われているのであろう
猫がいて、その猫はにゃんこ先生と呼ばれている。
その猫はとら猫で、ぽっちゃりとしており、
にゃあ、と鳴き声をあげる時に
なにか教えを諭すような、語りかけるような
そんな様子であるから、
にゃんこ先生と名付けられた。
おそらく、ほんとの名前があるのだろうけど、
それについては存じあげない。
今日は雨が降っていて、
坂道の角には濡れた
にゃんこ先生がいらっしゃった。
こんばんは、とご挨拶さしあげると、
いつものように、にゃあ、と声を上げ、
濡れた体をぶるぶるっと震わして、
珍しく駆け足で
坂道を横切っていかれた。