『十字路のあるところ』
わたしは身をもって風に乗るところを彼に見せてしんぜようと身構える。さいわい、本日は風に乗るには最適な晴天日和。わが研究室は最上階の四階にあるのだが、この際、エレベーターなどという無粋なものはうっちゃり、非常口から外の踊り場へと文字通りおどり出る。非常口というその名がいい。日常を脱するための最良の出口だ。
大阪出張。リサイクルセンターへ見学。
回収された冷蔵庫が扇風機のような機械で
粉砕される所を見せてもらう。
説明をしてくれる人が
「これは何度みても驚きます」
と仰っていた。
初めてみて僕達が驚いたのは至極当然。
京セラドーム内を見学。
投球練習をするブルペンでボールを投げさせてもらう。
でもろくすっぽボールはいかなかった。
今日の研修の大きな反省点。
帰りに梅田から電車に乗って車内で眠ってしまった。
目を覚ましたら、終点で全然知らない駅だった。
乗る電車を間違えていたのだ。
なんか狐につままれたような気分になる。
でもこれは単純な乗り間違いで
狐にはなんの罪もない。
狐はなんにもつつんじゃいない。
そんなの濡れ衣だ。
『海辺のカフカ』
「僕等はみんな、大事なものをうしないつづける」、ベルが鳴りやんだあとで彼は言う。「大事な機会や可能性や、取りかえしのつかない感情。それが生きることのひとつの意味だ。でも僕らの頭の中には、多分頭の中だと思うんだけど、そういうものを記憶としてとどめておくための小さな部屋がある。きっとこの図書館の書架みたいな部屋だろう。そして僕らは自分の心の正確なありかを知るために、その部屋のための検索カードをつくりつづけなくてはならない。掃除をしたり、空気を入れ換えたり、花の水をかえたりすることも必要だ。言い換えるなら、君は永遠に君自身の図書館の中で生きていくことになる」