ミカドベーカリー


家の近所にはミカドベーカリーという看板のかかった店がある。
けれどもそのミカドベーカリーのシャッターが開いている所を見たことがない。
看板はもう大分古びてはいるけれど素敵で、店の前を通る時に
どんな人が店をしていたんだろうなあ、と思うことがある。
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夕方過ぎに鴨川を自転車で走っていると
一部、京都マラソンのコースになっていたんでその片付けをしていた。
昼間にはおそらくここをたくさんの人が走っていたんだなあ。
参加した方々も運営に携わった方々もお疲れ様でございました。
鴨川はもうすっかりいつもの風景になっていて
ハーモニカの練習をする人や
サッカーをしている人達や
ジョギングをする人達や
トランペットの練習をする人や
川を横断する飛び石を騒ぎながら渡っている少年達がいる。
鴨川には実に多くの人達が集まってきて
思い思いに過ごしている。
そう考えるとすごい場所だなあと思う。
自転車を漕ぎながら思ったのは
東日本大震災が起こった時にひどい津波が生じたりしたわけだけど
海の近くに住んでいる方が
ずっと海にお世話になっていたから
この事で海のことを恨む気にはならない、
と話しているのを多分テレビでだと思うけど見た事だった。
そんな事を思っていると、川沿いの道から上がるべき所を
通り過ぎてしまい随分と北の方まで行ってしまったんだった。
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夜、相方と家の近所を歩いていたら
おばあさんがいて
その横を通り過ぎる時に
今日は変わった月の色やわ、と話しかけてきた。
見ると確かに奇妙にオレンジ掛かった月の色で
その月はなんだか妙に大きく見えた。
ほんとですねえ、と言って、
そのおばあさんと別れて
そのおばあさんは鍵を取り出して
ミカドベーカリーのシャッターをあけようとしている。
ミカドベーカリーのおばあさんだったのだ。