プログラム

よい天気の日。
自転車に乗って
信号待ちをしていた。
隣にはおじいさんがいた。
信号が青になる。
隣にいたおじいさんが
「よし、いくぞう」と言った。
僕はこれは「吉幾三」と
変換してとらえるべきかどうか戸惑った。
そして、隣にいるのは僕だけなので、
何かしらのリアクションを取るべきかと思い、
ねえ、信号が青になったから、吉幾三ってね、
という思いを込めた愛想笑いを
おじいさんに向けてみたが、
おじいさんは僕のことなど気にとめず、
ゆっくりとしたペースで横断歩道を渡る。
そして五秒間隔くらいで、
よし、いくぞうと発した。
まるでそういう風にプログラミングされた
おじいさんのようだった。
信号が青の時間をたっぷりと使い、
横断歩道を渡り終えたおじいさんは
もう、よし、いくぞう、とは言わなかった。
きっとそういうプログラムだったんだ。